025 Egretta Sacra III vol.1 :芝居用台本006  ・・・・・・・・・・・・・・

S-6 Der Mond geht auf

  ■概要
主要人数:3人
時間:
4,36

■ジャンル
ボイスドラマ、中世、シリアス、ファンタジー

■キャスト
パトリック(男、25歳、ロンズデール伯爵)
ノア(男、17歳、小姓)
ヴェラ(女、23歳、侍女)

タイトル
時間
キャスト
セリフ・ナレーション

S-6

 

  (ソファでくつろいでいるパトリック。ノアがトレンチに載せたシャンパングラスを持って登場して)

Der Mond geht auf

001

ノア (深々とお辞儀をし、丁寧に)
「失礼致します。お飲物をお持ち致しました」
パトリック、ノア、ヴェラ

002

パトリック (優雅に受け取って)
「ああ、ありがとう。・・・よかったら、君も一緒にどうだい?」

 

003

ノア (目を伏せて微笑んで)
「いえ、お気持ちだけで十分でございます」
TIME:4,36

004

パトリック (軽く笑って)
「そう・・それは残念」
 

005

ノア (丁寧にゆったりと)
「申し訳ございません」
 

006

パトリック (笑いながら肩をすくめて)
「フ・・・どうも、こういった社交の場は苦手でね。噎せ返るような香水の香りと、張り付いた笑顔・・・つまらない会話を繰り返すしか能のないオブロー(田舎貴族)。・・・空々しい態度と愛想笑いだけが、どんどん上手くなる」
 

007

ノア (穏やかに)
「はい」
 

008

パトリック (ノアをじっと見つめて)
「よかったら、君が話し相手になってくれないかな?」
 

009

ノア (穏やかに)
「はい。私でよろしければ喜んでお相手させていただきます」
 

010

パトリック (軽く笑って)
「ありがとう」
 

011

ノア (微笑んだままゆったりと)
「そういえば、エグレッタ・サクラの青き薔薇はご覧になりましたか?」
 

012

パトリック (穏やかに微笑んで)
「ああ、先程、ほんの少しだけ・・」
 

013

ノア (穏やかに)
「・・いかがでした?」
 

014

パトリック (優雅に流れるように)
「フ・・・噂に違わず、気高く華麗に咲き誇る、一輪の薔薇。・・・見る者全てを魅了する圧倒的な美。・・・誰もが、無意識に触れようとする・・・美しい薔薇には棘があると知っているのに・・・」
 

015

ノア (目を伏せて)
「・・ええ」
 

016

パトリック (遠くを見つめて)
「触れるもの全てを傷つける鋭い棘・・・うかつに近寄れば、その無数の棘に指を刺す・・・フ・・・さすがに刺される前に退散したけれどね・・・」
 

017

ノア (軽く頭を下げて)
「左様でしたか・・・」
 

018

パトリック (ゆっくりと立ち上がって手を伸ばして)
「今宵の月は、厚い雲に覆われて、その美しい姿を見せてくれない・・・」
 

019

パトリック (持っていたシャンパンを飲みながら、艶やかに)
「エグレッタ・サクラの闇夜に燦然と輝く銀色の月を愛でながら、ゆっくりとグラスを傾けるのも、また粋なものよと楽しみにしていたのに・・・」
 

020

パトリック (飲み干したグラスをノアに返しながら、ソファに戻り、軽く笑って)
「いくら手を伸ばしてみても、孤高の月には届かず・・か」
 

021

ノア (目を伏せて軽く微笑みながら)
「フ・・・どうでしょうか。エグレッタの月は気まぐれです。・・・間もなく・・・雲間から、顔を覗かせることでしょう」
 

022

パトリック (軽く驚いたようにノアを見て、すぐに弾けるように笑い出して)
「・・・っ・・・?・・・・フフフ・・・アハハハハハハ・・・・そうか、なるほどね。賽は投げられた・・ということか」
 

023

ノア (穏やかに)
「ええ・・」
 

024

ヴェラ (後ろから遠慮がちに声をかけて)
「ご歓談中のところ失礼致します。・・ノア、ちょっといいかしら?」
 

025

ノア (丁寧にお辞儀して)
「ああ・・はい。・・・・それでは、失礼致します。どうぞ、ごゆっくりお楽しみ下さい」
 

026

ヴェラ (ソファから少し離れて)
「何だか、随分楽しそうだったけれど・・・あの方は・・?」
 

027

ノア (爽やかに)
「あぁ・・あちらは、ロンズデール子爵様です。エグレッタ・サクラにいらっしゃるのは、はじめてということなので、薔薇の話を少々・・・」
 

028

ヴェラ (にっこり微笑んで)
「そう。・・・青い薔薇は、他では見ることができないから、きっと喜んでいただけることでしょう」
 

029

ノア (穏やかに)
「えぇ・・・そういえば、僕に何か・・?」
 

030

ヴェラ (思い出したように、後半は眉をひそめて)
「ああ、そうそう!お客様にお出しするワインを地下のワインセラーから運んでもらおうと思って・・・本当はハリーにお願いしてあったのだけれど・・・どこに行ったのかしら・・・姿が見えなくて・・・」
 

031

ノア (ちょっと考えるように、後半は快く引き受けて)
「ハリーさんが・・?・・・どうしたのかな・・?・・・ワインの件は承りました。・・キッチンに運べばよろしいですか?」
 

032

ヴェラ (優しく微笑んで)
「そうね。一度、キッチンに運んで一本ずつ状態を確かめてから、お出しするようにしてちょうだい。ありがとう、ノア・・本当に助かるわ・・・」
 

033

ノア (目を伏せて)
「いえ・・・」
 

034

ヴェラ (上方を見上げて気づいたように)
「あら・・・」
 

035

ノア (顔をあげて)
「どうしました?」
 

036

ヴェラ (にっこり笑って、上方をゆびさして、うっとりと)
「いいえ、たいしたことじゃないの。・・・ほら、今日は満月なのね・・・忙しくて、そんなことにも気づかなかったわ・・・それにしても綺麗ね・・・」
 

037

ノア (艶やかに)
「・・・僕の心は楽しい時と悲しい時の、あらゆる余韻を感じとり、喜びと痛みの間を、孤独に歩んでいる」
 

038

ヴェラ (キョトンとした顔で振り返って)
「え・・?」
 

039

ノア (目を伏せて軽く微笑みながら、軽くお辞儀をして退場する)
「フフ・・・『月に寄せて』というゲーテの詩の一節です。それでは、僕はワインセラーへ行って参ります」
 

040

ヴェラ (ちょっと茫然とした様子で、すぐに気をとりなおして微笑んで)
「え・・ええ・・よろしくね、ノア」
 

041

ヴェラ (ノアを見送って振り返って、首を傾げながら)
「それにしても・・・ハリーったら、どこへ行ったのかしら?『今日はノアに負けないくらいに、きっちり仕事をして、先輩の意地を見せてやります!』なんて言って、あんなに張り切っていたのに・・・」
 

042

ヴェラ (軽く腕を組んで)
「サボリ癖は相変わらずなのかしら・・・?本当、しょうがない子ね・・・」
 

043

パトリック (後ろからヴェラに声をかけて)
「ねぇ、お嬢さん・・・」
 

044

ヴェラ (慌てて振り返って)
「は、はい!」
 

045

パトリック (優雅に微笑んで)
「少し強めのお酒をもらえるかな?ブランデーとか・・」
 

046

ヴェラ (頭を下げて)
「かしこまりました」
 

047

パトリック (手をのばして大袈裟に)
「もしよかったら、テラスに出てみたいんだが・・・ほら、月があまりに美しいから・・・フ・・・案内してくれるかい?」
 

048

ヴェラ (優しく微笑んで)
「はい。どうぞ、こちらでございます」
 

049

パトリック (穏やかに)
「そういえば、君の名前は?」
 

050

ヴェラ (丁寧に答えながら退場して)
「ヴェラ・ルーツィンデ・シュラックと申します。ヴェラとお呼び下さいませ」
 

051

パトリック (含み笑いで退場しながら)
「そう、ヴェラ・・・フ・・・私はパトリック・・・」
 
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